映画「ミケランジェロ・プロジェクト」
「ミケランジェロ・プロジェクト」という映画をご存じだろうか。2014年秋に日本で公開予定だった映画だが、公開中止となり、前売り券は払い戻され、その後、2015年秋に日本で公開された映画だ。
何故、2014年公開が中止となったかは未発表のままであったために色々と詮索されるが、考えられる理由は、政治的な理由でなかろうかという見解が多い。この映画は、実話を元にした作品であり、脚本・制作指揮・監督であるジョージ・クルーニーによると、その物語の80%は真実であると話している。
原作はロバート・M・エドセルの「ナチ略奪美術品を救え─特殊部隊モニュメンツ・メンの戦争」。第二次世界大戦下で、連合軍将兵「モニュメンツ・メン」は、美術品や文化財が破壊される前に、ナチスより奪還を試みる。その実話を映画化したものである。この辺りからも、政治的な理由という見解も頷ける。
ナチ略奪美術品を救え─特殊部隊モニュメンツ・メンの戦争
ロバート・M・エドセルは、1995年フレンツェに移住した際「激しい戦闘が行われたのに、イタリアはどのようにして建造物や美術品を守ったのか」疑問に思い、調査を始め、「モニュメンツ・メン」の存在を知ることとなる。
過去の戦争でも、奪われるのは土地や資源だけではなく、多くの美術品が略奪の対象でり、美術品は勝者が保有していた。第二次世界大戦時も、ヒトラーはフェルメール、モネ、ピカソ、ダヴィンチなどの絵画や美術品を略奪し、それらを展示する総統美術館の建設も予定されていた。略奪された数は推定65万点とも言われ、隠し場所は1400ヵ所以上と言われている。
日本でも、焼失した安土城を見てみたいと思う人も多いのではないだろうか。
モニュメンツ・メン
モニュメンツ・メンは1943年から1951年まで活躍した連合軍のMFAA部隊所属の兵士たちのことである。※記念建造物(Monument)・美術品(Fine Arts)・公文書(Archives)
彼らのプロジェクトは、当初、歴史的な建造物を爆撃から守ることであったが、ナチスの戦線が後退していくと、ナチスによって略奪さえれた絵画や美術品を奪還することを重要な目的とした。しかし、彼なの存在は公にされることはなかった。メンバーは、美術館の館長、学芸員、美術史学者、彫刻家、建築家であり、若くはないが美術に精通したメンバーであった。
映画「ミケランジェロ・プロジェクト」中止の理由
正式な発表がないので、憶測に過ぎないが、美術品の返還上の問題があるのではないだろうか。美術館や美術品のコレクターの所持品の中にはナチスなどから購入した美術品も存在する。
映画「黄金のアデーレ 名画の帰還」はマリア・アルトマンが、家族で所有していてナチスに没収された作品をウイーンの美術館から取り戻す過程を描いた映画である。
ナチス略奪絵画の返還
1998年、オーストリアで略奪作品の返還法が制定、美術館での収蔵品の来歴調査が進み、有名作品の返還が進んでいるという報告が2011年にある。しかし、2012年、多くの美術品が個人宅で見つかるという事実もある。また、多くの美術品が所有者の特定が難しく返却が進まず、美術館などへの寄贈も法的にも、倫理的にも難しいという。
映画の中の美術品
美術品 | 現在 | |
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レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」 | サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院(ミラノ) | 屋根などが破壊されるが土嚢などを積み奇跡的に残った |
ヘントの「祭壇画」 | シント・バーフ大聖堂(ベルギー) | アルトアウスゼーの岩塩坑 |
ミケランジェロの「ブリュージュの聖母像」 | ブルージュ聖母教会(ベルギー) | アルトアウスゼーの岩塩坑 |
フェルメールの「占星術師」 | ルーブル美術館蔵(パリ) | アルトアウスゼーの岩塩坑 |
レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」 | ルーブル美術館蔵(パリ) | |
レオナルド・ダ・ヴィンチの「白貂を抱く貴婦人」 | チャルトリスキ美術館(ポーランド) | ポーランド総督フランク家 |
ヤン・フェルメールの「絵画芸術」 | 美術史美術館(ウイーン) | アルトアウスゼーの岩塩坑 |
ヤン・フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」 | マウリッツハイス美術館(オランダ) | |
ミケランジェロの「ダヴィデ」 | アカデミア美術館(フィレンツェ) | |
レンブラント の「夜警」 | アムステルダムの国立美術館 | |
「ホメロスの胸像を見つめるアリストテレス」 | メトロポリタン美術館(ニューヨーク) |